少し前になりますが、ミシガンに住んでいらっしゃる日本人の方で、バレエに携わっていらっしゃる方から、デトロイト公演のレポートを書いていただきました。
マッケンジー版「白鳥の湖」の魅力に触れていただけます!
『白鳥の湖』に関しては何度見ても、演出・振付者・踊り手によって新たな発見があり、主役はもちろん、群舞のアンサンブルもそれぞれユニークに構成されていると感じます。音楽構成は同じにせよ、特にラストシーンはハッピーエンドなのか、それとも悲劇で終わるのかにゾクゾク、ワクワク。国内外の『白鳥の湖』を数多く観てきた私には、どちらにせよ、セットや結末には興味が湧く深い面白い作品のひとつです。
2007年3月、ABTのアメリカ国内ツアーでのデトロイト公演『白鳥の湖』の5回公演の内、3回も鑑賞するチャンスに恵まれました。デトロイトには素晴らしいオペラハウスがありますが、世界的に有名なバレエ団の舞台が観られるのは1〜2年に1度程度。『白鳥の湖』や『くるみ割り人形』のようなポピュラーな演目は特に人気があります。
DVDで何度も観ているマッケンジー版の内容は、やはり生の公演となると観応えがありました。幕ごとのセットや衣装は非常に色彩に富んでかつ荘厳、豪快に展開されユニーク。その中でくり広げられる各場面はハリウッド映画並みのアメリカらしい大胆な情景で、観客の眼を充分楽しませてくれました。眼の前のダンサーたちの迫力を肌で感じられ、群舞ではダンサーひとりひとりの動き、表情や個性を細かく表現させるマッケンジー版は魅力的、さすが、マッケンジー!改めて彼の凄さ、新しい演出に圧倒されます。
プロローグは、美しい女性が森の悪魔ロットバルトの魔法で白鳥に変えてしまうシーンですので、バレエ観賞初心者でも「白鳥の湖」を充分理解できるのが嬉しいと思います。楽しみです。
<3組のダンサーたちの魅力を堪能>
私が拝見した『白鳥の湖』の主役は、《パロマ・ヘレーラ&ゲンナジー・サヴェリエフ組》が2回、《ジリアン・マーフィー&ホセ・カレーニョ組》。
誕生日のお祭りシーンは、王妃から花嫁を選ぶよう言われた王子が、自由を奪われる悲しみから切ない表情のシーン。孤独な踊りと演技力でその雰囲気を十分に表現しつつ、カレーニョはオーラを放つ存在感で魅了。華麗なソロは上品で繊細、そして熟練された高い技術を持つ踊りはサヴェリエフと、配役の妙を楽しむことができ、これもスターダンサーを擁するアメリカン・バレエ・シアター(ABT)ならでは、とため息が出ました。
踊りが大胆で躍動感が舞台いっぱいにあふれるマーフィーの32回転は見事!DVDで観た時より更にレベルアップされ、腕を大きく上下に羽ばたきながらの大回転は今までにも見たことがありません。マーフィーとヘレーラのオデット/オディールは堂々とした安定感ある完璧なテクニックを披露。3幕のキャラクターダンスも必見。
舞台が明るく華やかな設定、幕が開いた瞬間、その華やかさにを奪われ客席までもが優雅な気分にさせる力強さ。音楽をくまなく使う演出、隅々までオーガナイズされたセット、長い演出にも拘わらず観客を退屈させず引き付ける魅力ある舞台で心から堪能させる傑作です。
日本の公演が待ち遠しい。
レポート:from ミシガン/Takako