5月に開幕したABTのメトロポリタン・シーズンも、いよいよ来週で終わり。
ダンサーたちの間でも、日本公演を心待ちにする声がますます大きくなっているそうです。来日直前!、現地NYから「ラ・バヤデール」公演のレポートをお届けします。
「ラ・バヤデール」公演も、他の古典作品同様1週間上演されましたが、ジリアン・マーフィーが初めてニキヤを踊ったり、加治屋百合子がガムザッティにキャスティングされたり、話題も多かったようです。
ジリアンは来日中のインタビューで「METシーズンでは古典作品の役を、自分のペースにあったタイミングでひとつひとつ任せてもらえたことで、自分のキャリアを着実に重ねることができた」と話していましたし、加治屋百合子も「(あの伝説のバレリーナ)マカロワから直接レッスンを受けれて、本当に素敵です」と教えてくれました。
今回のMETシーズンで大活躍の二人に、来日したらぜひ感想を聞いてみたいと思います!今から来日が待ち遠しいです!
それでは、公演レポートお楽しみください。
6月最終週のニューヨークでは、全3幕5場構成のマカロワ版『ラ・バヤデール』が上演されました。この作品は、『白鳥の湖』『眠れる森の美女』同様、マリウス・プティパが振り付けを手がけた60ものバレエ作品中の傑作の1つとされており、古代インドを舞台に、愛・神秘・運命・復讐・正義といった複雑な要素を絡ませながら、壮大な愛の物語が展開していきます。
寺院の舞姫(バヤデール)のニキヤは、自分に好意を寄せる大僧正の愛を拒絶し、一途に戦士ソロルを慕い、2人は永遠の愛を誓っていました。しかし、領主の娘ガムザッティの美貌と権力に魅かれたソロルは、ガムザッティとの結婚を承諾してしまい、ニキヤはその祝宴の席で舞を披露するよう命じられます。そして毒蛇の隠された花篭を受け取り、行き途絶えてしまうのです。
さて、ニューヨークの観客は、公演後各々の感想を自由に語り合います。先日も、ABTの公演プログラムを手にした年配の女性が、「公演中涙が出てきてしまったの。彼女はまさに役者だわ。」と話していました。彼女とは、この日ニキヤ役を踊ったパロマ・ヘレーラのことです。全編を通じ、悲恋を抱えながられも美しく舞を披露をするニキヤの姿に、観客の誰もが心を打たれたことでしょう。また、共演のアンヘル・コレーラも、ニキヤを裏切ってしまった悔恨と彼女を失った悲しさに苦しむソロル役を、十分に演じきっていました。
そして圧巻は、「影の王国」と呼ばれるソロルの夢のシーンです。精霊達が一人ずつ、アラベスク・パンシェを繰り返しながら登場しますが、ABTのコールド・バレエの美しさはここでも立証されました。更にスカーフを使ったニキヤとソロルの舞では、非常に美しく、息の合ったパートナーシップを堪能することが出来ました。
ABTの日本ツアーでは、オールスター・ガラ公演の両日、ミシェル・ワイルズとデイヴィット・ホールバーグの『ラ・バヤデール』パダクション(*)が予定されています。どんなパートナーシップを見せてもらえるのか、こちらも是非期待したいところです。
(6/18『ラ・バヤデール』鑑賞:ブログ・レポーターfromニューヨーク/Akane)
*「ラ・バヤデール」パ・ダクシオンでは、第1幕3場のシーンが上演されます。
パ・ド・ドゥだけではなく、コール・ド・バレエも加わった舞台になる予定です。