
コレーラは、とてもストレートに王子の考えていることを表現します。「今彼は何を考えているんだろう?」と観客に思わせる隙を与えず、刻々と変わる王子の複雑な心境を、逐一客席にわかりやすく伝えてくれます。その結果、お客さんは王子に対して感情移入しやすくなり、舞台により深く引き込まれ

堂々たる立ち居振る舞いで登場した自信に満ち溢れた王子が、胸に手を当て初めて経験する恋という感情に戸惑う様子や、オディールを一目見た瞬間にオデットと勘違いし、嬉しさのあまり輝く笑顔を浮かべる様子、そして殺気すら感じられるほど燃えるオーラを発してロットバルトに対峙する様子、などなど・・・
演技から伝えられる王子の心境のわかりやすさが、コレーラの舞台を、多くのファンをもつコレーラの舞台たらしめている一つの要因であると同時に、バレエ鑑賞経験が浅いお客さんにも親しみやすい舞台にしている要因の一つであるようにも感じられました。 そして舞台上で踊るコレーラは、とにかく生き生きしています。第2幕、黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ。ヴァリエーションやコーダで、マリインスキー劇場の舞台空間に、観る者を幸せにするあの笑顔をたたえジャンプし浮かび上がる彼の姿は、心の底から「今日ここに来てよかった・・・」とさえ思わせるほどの感動を運んでくれました。
マリインスキーの王子様達とは一味違う、感情の豊かさ・激しさをもつコレーラ王子は、ロシアの観客にもユニークに映ったようですし、客席にはマリインスキーのダンサー達の姿も見られ、自分たちとは異なる表現方法を持つ世界的なスターの舞台へ寄せる興味関心がうかがえました。
<Photo:N.Razina>
いまや立派なマリインスキーのプリンシパルであるテリョーシキナの素晴らしいパフォーマンスも相まって、終演後の永遠に続くかのようなカーテンコールは、舞台の感動をより一層深めるものとなりました。
レポート: チアトラールカ